第9
よく晴れたその日、私はいつもの通りに家を出たけれど、いつもの通りには学校に行きませんでした。私はいい子、嘘はつきません。だから私はその朝、お母さんに行ってきますはいったけれど、どこに行ってくれるとは言いませんでした。そう言うのをかしこいと言います。
もちろん私には学校に行くよりもよっぽど大事な用事があったから、学校に行かなかったのですが、本当のことを言うと、私はこれからずっと学校に行く必要に行かない必要はないかもしれないと思っていました。勉強は、アバズレさんに習えばいい。給食は食べなくても、おばあちゃんのお菓子で我慢する。ひとみ先生には時々手紙を書こう。義務教育なんて行って小学校には絶対に行かなきゃいけないなんていうけど、必要がない場合はどうなるのでしょうか。
そういえば、前に映画で飛び級と言うものがあることを知りました。私はかしこいから、飛び級が使えるかもしれません。いやもう、アバズレさんの言うように、賢くなることが全てじゃないなら、その目的のために学校に行っていた私には、もうどの学校もいらないのかもしれません。
なんてことを考えていると、いつの目的地に辿り着いていました。
今日学校ではなくここにきることに、私は一つの迷いもありませんでした。
今日は前に来た時は違います。まず持って、隣に友達を連れていません。それに、今はまだ朝。そして一番の違いは、もう私には彼を責める気なんてどこにもないということです。
私は前に来た時と同じように、チャイムを何度か押しました。少しして聞こえてきた子も、前と同じ、元気のなさそうな女の人の声。その声に、前に来た時は元気に挨拶をしました。でも、今日はそれようりも先に、することがあるのです。
私は、相手にきちんと気持ちが伝わるように、心を込めて、言いました。
「桐生くんのクラスマイトの小柳なおかです。この前は、ごめんんさい」
私は、相手に見えていなくてもそこで頭を下げました。謝る時とお礼を言う時は、心の全てを込めなくちゃいけない。それは、賢くても賢くなくても変わりません。
私の心が、桐生くんのお母さんに伝わったのでしょう。桐生くんのお母さんは、前と同じようにとても優しい声で、「ちょっと待っててね」と言ってくれました。
217(3:13)
やがてでて来た桐生くんのお母さんに、私はもう一度、頭を下げました。
「おはようございます。この間は、ごめんなさい」
それは、この前桐生くんに行くじなしと言ったことと同じくらい、私の本当の気持ちでした。
「おはよう。ううん。小柳さんが謝ることなんてないわ」
桐生くんのお母さんは、首の横に振ってくれました。でも、そんなことはありません。私にはたくさんの謝りたいことがあるのです。
「この前は、せっかく来たのにちゃんと帰りの挨拶もしなくて、それに桐生くんにあんなことも言っちゃって、ごめんなさい」
「いいのよ。謝らなきゃいけないのは光の方。せっかく小柳さんが来てくれたのに。部屋から出てもこのないで。小柳さんがくれたノート、すごく丁寧に書けてた。ちゃんと光に渡したわ。今日は、学校に行く前に寄ってくれたのね」
桐生くんのお母さんは、前にあんた失礼をした私を本当に許してくれている見たいでした。でも、優しいお母さんの言っていることは少しだけ間違っていたので、私は今日来た理由をちゃんと伝えます。
218(4:41)
「桐生くんと話したいことがあって来たの。味方になるとか、戦うとか、学校に行くとか、そんなことじゃない、もっと大切なことよ」
「大切なこと?」
桐生くんのお母さんは優しいです。だから私に言わなかったけど、私が桐生くんに話があると言った時の顔は、まるで物語の中に出てくれるお城を守る門番のようでした。ようするに、私は警戒していたのです。当然のことです。前の私は、失礼なだけじゃなく、桐生くんを傷つけもしたのですから。
でも、そんなことで締めてしまうなら、私はここに来ていません。今日、私はどうしても桐生くんと会って話がしたいのです。
許してもらうため、私がすることといったら、一つしかありませんでした。
正直に、どうしてここに来たのか、何を話したいのか、どうしてそう思ったのか、そしてどうなりたいのか、その全部の私の心を一つの嘘もなく、お話しすることしかできませんでした。犬の散歩をしている人や、私と同じ小学校に行く子達が家の前を通るの中、私は分かってもらいたい一心で、桐生くんのお母さんに説明をしました。
心からの想いというものは、きちんと相手に伝わるものなのだと信じています。だからきっと私からの「いくじなし」と桐生くんにそのまま伝わってしまったのでしょう。
219(6:28)
不安もありました。だけど、信じていた通り、私は、心を桐生くんのお母さんにもきちんと伝えることが出来たみたいでした。桐生くんのお母さんは、私をこの前と同じように家の中に入れてくれました。
でも、前の時と違ってどうして桐生くんのお母さんの目が少し濡れているのかはわかりませんでした。大人の涙の理由は、かしこい私が考えてもよくわかりません。それに、大抵の場合訊いても教えてくれないのです。桐生くんのお母さんも、あばずれさんも、南さんも。
桐生くんの家で私は前と同じようにオレンジュジュースを出してもらいました。それを一口だけ飲んで、私は2階への階段を登ります。桐生くんのお母さんにはついてきてもらいませんでした。単に必要がないと思ったからです。桐生くんのお母さんも、そっちの方がいいかもしれないと言ってくれました。
階段を登る途中、私は全くと言っていいほど緊張していませんでした。前に来た時の方が緊張していたくらいです。今日は、まるでアバズレさんの家に続く階段を登るような気分でした。この一歩一歩が、何に続いているのか、例えば幸せへと続いていくもなのかはわかりません。
でも、誰かのことを真剣に考えることが幸せだとアバズレさんは言いました。私は、人のことには賢くない。分かっています。
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だから、皆のことを好きになったり考えたりすることは出来ません。だから、私はたった一人だけのことを考えることにしました。
そうしてここに来た今の私は、きっと幸せなのです。私は、歌いました。
「しっあわせはー。あーるいーてこーない、だーかーら、歩いていくんだね」
一緒に歌ってくれる人はいません。尻尾のちちぎれた彼女も、アバズレさんも、南さんも、おばあちゃんもここにはいません。一人で歌っても楽しいけど、やっぱり歌っていうのは誰かと一緒に歌った方が楽しいわ。
だったら、一緒に歌ってくれる人を、見つけるしかないのです。
一つのドアの前に立って、私はそこをコンコンとノックしました。ノックをしたのがお母さんじゃないことは、もうばれています。
「桐生くん、ごきげんよう。最初に言いたいことがあるの。この前はごめんさい」
私はドアの前でお辞儀をしました。もちろん相手には見えていません。桐生くんからの返事もありませんでした。
私は、桐生くんが訊いてくれていると信じて、息を吸います。
「桐生くんに謝りたかったのは、本当の気持ちよ。だけど、今日はそのためにきたんじゃないのもっともっと、大切な話をしに来たのよ」
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背中のランドセルを床に下ろして私はドアの向かいの壁に背中をつけて座りました。
そして、ランドセルの中から、一冊のノートを取り出します。私は一つの教料ごとに一つのノートを使っています。算数なら算数のノート。料理なら料理のノート。今、私が取り出したのは、国語のノートです。
まだ、桐生くんの声は聞こえません。
「さ、桐生くん、話し合いを始めましょう」
ノートを聞くと、そこには私と桐生くんのこれまでの話し合いの記録が書かれています。
「問題、幸せとは何か」
そうです。今日、私は学校に行くとか、敵とか味方とか、勇気があるとかないとかではなく、その話を、その話だけを桐生くんとした来たのです。どうしてって理由を聞かれたら、その話を、その話だけを桐生くんとした来たのです。どうしてて理由を訊かれたら、きっと私はこう答えるでしょう。
私は一緒に幸せを見つけられることが、友達や味方を言うことなんだと思ったからです。
昨日の夜、私ははじっと考えました。味方とは何か、そうし思いついたのです。
アバズレさんはわたhしのことを考えて幸せになってくれた、私はアバズレさんといることが幸せ。南さんは私といて幸せになるって約束をしてくれた、私は南さんn物語を読んで幸せな気分になった。おばあちゃんは、私が来ることが幸せだと言ってくれた、私は、おばあちゃんのお菓子を食べながら本の話をすると幸せ。
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だから私は、桐生くんとも一緒に幸せを見つけたったのです。それが、味方になるって言うことだと思ったのです。
ちょうどよく、桐生くんは私の授業でのペアでした。話し合いに必要な材料は、うちの冷蔵庫nよりもノートによく揃っています。
「じゃあま復習から始めましょう。今までの私達の考えを読むわね。幸せとは何か、最初の話し合いの時にいつ幸せを感じるかを話し合ったわ。クッキーにアイスをのせた時、おばあちゃんのおはぎを食べた時、お母さんの作ったお菓子を食べた時、本を読んでいる時、友達と歌を歌っている時、夕食がハンバーグだった時、お父さんとお母さんが早く帰ってきた時、家族で旅行に行った時、好きなアイスを選べる時」
私は、わざと一つだけ書いてあったことをいいませんでした。
「次の授業でしたのは、幸せじゃないと感じる時はいつか、だったわね。ゴキブリを見た時、給食が納豆だった時、桐生くんはわかめのサラダが出た時って言ってたけど、私は反対したわ。わかめって美味しいのよ」
桐生くんの部屋からは、何も聞こえません。
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「幸せじゃないことをいくつか出しあった後、私達はちょっと違うことも話したわ。幸せじゃないって言うことは、幸せの反対で、じゃあ幸せじゃないことの反対のことが起れば幸せなのかってこと。でもきっとそうじゃないって結論に至ったわ。納豆が給食に出てこないだけじゃ幸せを感じないもの。桐生くんもわかめが出てこないだけで幸せにはならないって言ってたわ。せめて、そこにからあげが着いてこなくちゃ」
桐生くんは、何もいいません。
「その後、何度か授業があって、授業参観があったわね。あの時の発表で、私はお父さんとお母さんが来てくれたことだって言ったわ。あの時の気持ちは嘘じゃないけれど、やっぱりそれだけじゃ幸せのことを説明できないと思うの。桐生くんが発表したことは、あれって本当に思ったことじゃないでしょ?」
「。。。」
「あの後の授業での反省会で、どうしてそれが幸せだと思ったのかって言うのを話し合った
時、桐生くん、答えられないかったもの。でも、別に今は桐生くんが嘘をついたことについて話したわけじゃないから、どんどん進みましょう」
「。。。。」
「じゃあ、ここからは桐生くんが学校に来ていなかった時の話よ。私、ひとみ先生と代わりにペアを組んで、話し合いを続けたの。桐生くんがいた時とやり方はほとんど変わらないけど、今度は幸せを感じる時、なんで幸せを感じるか考えたの、私は」
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「どうして」
なんの、前触れもなく、私の言葉を遮って聞こえてきた桐生くんの声は、私の耳がよくなかったなら聞こえなかっただろうと思うほど、小さなものでした。
声が聞こえてきたことに、驚きはしません。桐生くんは、優しい。きっと、クラスメイトを無視するなんて酷いことは出来ないって、私は知っていました。
「どうして?ひとみ先生とペアを組んだこと?それはうちのクラスの人数が偶数だからよ。よかったわ。桐生以外に誰も休んでなくて」
「。。。違う」
桐生くんの言葉の前には、たくさんの空白がありました。今度も深呼吸をしているのだと私は思いました。深呼吸は必要です。心に隙間を作るために。
違う、その言葉の続きを私はいつまでも持ちました。扉の何こうから、桐生くんの静かな息が聞こえてくれるみたいでした。もう一度言います。桐生くんは優しい。だから、持っていれば必ず、応えてくれると、私は信じていました。
「。。。ひとみ先生の、こと、じゃなくて。。。小柳さん」
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ほら。
「私?」
私が首を傾げたこと、ドア越しにでも桐生くんになら見えたかもしれません。他の誰に見えなくても、桐生くんになら。そんな気が、したのです。
「どうして。。。。」
「うん」
「小柳さんは、また来たの?」
なるほど、私はぽんと手を打ちます。
「どうしてって、来ないでって言ったのにってこと?」
「。。。うん」
「嫌ならすぐに帰るわ」
返事は、来ませんでした。代わりに、桐生くんはまた同じことを言いました。
「どうして」
「ええ」
「なんで」
「うん」
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「僕にそんなに構うの?」
桐生くんの声は、さっきのどうしてここに来たのかという質問の時とは違うものでした。さっきのは答えを知れたいどうして、今度のは、本当にどうしてかわからないどうして。桐生くんにとって、質問の意味が大きく違っていたのでしょう。その大切さも。
だけれど、私にはそんなこと関係ありませんでした。どうちらの質問の答えも、既に持っていたから。
「そんなの簡単よ。私が来るって決めたから、私が構うって決めたから」
「。。。え、いや」
「あと桐生くんの絵が好きなのよ、私」
扉の奥、桐生くんの息が止まった音がした気がしました。まさか死んじゃっていないと思ので、気にせず私は続けます。
「私は、自分に作れないものを作れる人を凄いと思うわ。おばあちゃんの作るお菓子、南さんの書く物語、桐生くんの描く絵、全部、今の私には作れないから、凄いと思う。だからいつも言ってるのよ。桐生くんは凄いんだからって」
もう、無理に見せびらかせとは言いません。桐生くんがそれをしたくないから、無理やりにそうさせても、誰も嬉しくなりませんから。
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「南さんっていうのは私の友達よ。もう、しばらく会っていないけど」
「。。。友達、いたんだ」
かなり長い空白の後、聞こえてきた声がよりにもよってそれだったことにさすがの私もほっぺたを膨らませました。怒らないけど、失礼なことを言われた時は注意したっていいはずです。
「何よそれ、私にだって友達くらいいるわ。とっても素敵な友達がね」
「そう、なんだ」
ええそうよ、私が頷こうとした、その時でした。
「。。。あ」
桐生くんの部屋の中から、大きな声が聞こえてきたのです。虫でも出たのでしょうか。きっと私に意地悪を行ったむくいだと思って、私がしめしめと笑っていると、桐生くんが慌てて、いつもの喋り方とは違う早口で中から呼びかけてきました。代わりに虫をやっつけてくれ、なんて言われたら嫌だなと思いましたが、どうやら違うようでした。
「こ、小柳さん、学校行かなくていいの?」
「。。。ああ、なるほど。もうそのな時間なのね」
私は腕時計も携帯電話も持っていません。だから、どれだけ時間が経ってるのか知ることができませんでした。
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「遅刻、しちゃうよ?」
「別にいいわ。学校なん手行かなくても」
桐生くんは、驚いたようでした。それはそうでしょう。いつも真面目でかしこい私がこんなことを言うなんて。
桐生くんは、また慌てました。
「い、行った方がいいと思うよ」
「桐生くんだって言ってないじゃない。いいのよ別に、もっと大事な用事があるんだから。クラスの子だって前に親戚の結婚式で休んでたわ」
「。。。。もっと、大事なことって。。。」
「桐生くんと幸せを見つけるのよ」
そうです。それが、今の私にとっては、学校に行くことなんかかよりもずっとずっと大事なことでした。
私は思っていたのです。桐生くんの味方になりたいって。それはひとみ先生に言われたからだと最初は思っていました。
でも考えて、気がついた。私は、ずっと自分の心でそう思っていたのです。最初から何も変わっていません。
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私は、クラスの子が1人学校に来なくなったことを気にしない優しいない子達よりも、私が授業参観に誰も来ないからと落ち込んでいる時、言葉をかけて苦たりしない優しい桐生くんの味方をしたい。それだけなのです。凄いと言った癖に、私を無視したりしない優しい桐生くんの味方がしたい。ただ、それだけなのです。
変わったとしたら、私のやり方だと思います。前まで私はその気持ちを、桐生くんの代わりに喧嘩をすることで表してきました。でも今は、桐生と一緒にどうすれば幸せになれるのかを見つける。そっちの方が楽しいと気がついたのです。
だから私は、学校の時間なん話よりも、幸せの話の続きをしようと思いました。
「ねえ、もう一度訊くけれど、桐生くんの幸せは、何?」
「こ、小柳さん。。。」
桐生くんは困っている見たいでした。きっと、私がいくじなしと言わなくなったからです。私だて桐生くんが突然喧嘩を始めたら驚きます。荻原くんに無視されて驚いてしまったみたいに。
「今の桐生くんの考えを聞きたいわ」
「小柳さん。。。学校に行った方がいいよ」
「大丈夫って言ってるでしょ。ねえ、桐生くんの幸せは、何?」
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「駄目だよ、小柳さんが学校を休んじゃ。。。」
「私が駄目で桐生くんが大丈夫なのはおかしいわ。だから、大丈夫なのよ。そうね、私から言うわ。これは私の考えではないんだれど、私の大切なお友達が言ってたの、幸せとは」
「学校に行かないと」
「しつこいわね!行かないって言ってるでしょ」
つい、大きな声を出してしまいました。いけない、と思ったけれど、言っちゃった言葉は戻ってきません。私はすぐに「ごめんなさい」と謝りました。
それから、私は気がつきました。気がついて、決めました。友達や味方手っていうのはきっと、相手のため以外の隠しごとをしないものだわ。
私は、正直に、今の気持ちを彼にぶち上げることにしたのです。
「ごめんなさい。黙ってたんだけど、私、今、クラスで無視されてるのよ」
「え。。。」
「知ってるでしょ、元々クラスに友達はいなかったわ。けど、話す子はいたし、挨拶をすれば、皆応えてくれた。でも、今、皆に無視されてる」
幸いことを話すのは、それを経験するときと同じくらい幸せて、でも、深呼吸と同じで心に隙間が出来るような不思議な気分を味わうことになります。
231(25:32)
「そんな子達ばあkりがいる場所に行きたくないあわ。それよりも、桐生くんと難しい問題を解くことの方が楽しい」
言っている途中です。私は大事な大事なことに気がつきました。
「ねえ、私、これからここに来るわ。だから、絵の描き方を教えてよ。桐生くんみたいな絵を描けるようになんて、小学校にどれだけ行ってもなれないわよ」
気づいちゃったのです。
「代わりに私は、そうね、何を教えてあげようかしら。人生とは、隣の席みたいなものでしょう?」
「。。。」
味方が欲しいのは、私だった。
「持ってない給料書があるならお互いに見せ合わなきゃ。それにそうね。毎日見る顔なんだから、嫌いな子じゃない方がいい」
「。。。僕は」
「ええ、何?」
しばらくの時間が経って、それから聞こえてきた桐生くんの声は、元々お聞くない桐生くんの声の中でも一層小さなものでした。
232(26:54)
「。。。どうしたら。小柳さんみたいになれるのか、教えてほしい」
桐生くんの声がたとえ花の鳴き声くらい小さくても、私には聞こえました。そして、なんだそんなこと?と私は拍子抜けしてしまいました。
「私みたいにならなくていいわ。私みたいになっちゃったら桐生くん、素敵な絵が描けなくなっちゃうわよ。私の描いたライオンを見て、お母さん太陽の塔って行ったのよ、嫌になっちゃう』
「。。。。」
「だからもし、魔法使いに誰かに変えてもらえることになっても、ちゃんと自分の選んでね。いい?
桐生くんは、うんともすんともいいえとも言いませんでした。代わりに、たっぷりの透明な時間を使ってから、少しだけ大きくなった声で、別のことを言いました。
「。。。。やっぱり、小柳さんは学校に行った方がいいよ。」
予想もしていなかった桐生くんの言葉に、私は驚きました。桐生くんに、私が、決めたと言っていることをそうやって何度もしつこ反対するような強情な顔があるなんて、知らななかったです。
233(28:26)
当然、私は気になりました。
「どうしてよ。いつもだったら、私が授業で言ったことにも反対しないのに、今日ばっかりしつこくて。もしかして私が嫌いだから、無視する子達の中にが混ぜ込みたいの?」
冗談のつもりで言いました。桐生くんが、壁越しでもわかるくらい慌てて首を横に振る様子を想像して。なのに、桐生くんからの返事がなかなか返ってこないものだから、私はとても不安になってしまいました。
前にここに来た時の、桐生くんから受け取った言葉が私の心の奥から空気を欲しがる見たいに少しずつ浮かびあがってきます。その言葉が息継ぎをしてしまったら、私の心には、また黒い嫌なものが巣を広げげてしまって、私の勇気はクモに捕まった、ちょうちょのようになってしまうでしょう。
そうなってしまう前に、桐生くんんは本当は私を嫌ってなんていない、嫌いだったらこんなに話をしてくれるはずがない、そうだ、あれは桐生くんの口が勝手に動いただけなんだ、というのを知らなきゃいけないと思いました。
だから、私は桐生くんに同じ質問をもう一度して答えを貰おうと思いました。でも、それは桐生くんに止められてしまいました。



